遠い世界にいる貴方へ

 

 

 あれから、二年が経った。僕がフォルトナの社長になってから二年だ。高校生社長だとかで盛り上がってしまって、一時期自社のアーティストたちよりも有名になってしまったのが昨日のことのように思い出せる。それから、こんな書き出しで始めてしまいましたが、僕と畏まるのはなんだか背伸びをしているみたいでむず痒いので、ここからは自分のことを俺と書きたいと思います。書き方もこの敬体で統一しますね。(ですますが敬体だというのは知らなかったので、実は少し調べました。お恥ずかしい限りです)
この本を読んでいただくにあたってのお願いを、まず初めに書いておきたいと思います。
これは、俺が一番お世話になった、ある人に読んでもらいたくて書きました。その人は俺の大切な友人であり、兄のような人です。そして二年前、フォルトナ一同は密かな戦いに身を投じていました。これについては別の機会があれば詳しく触れたいと思いますが、その人は、俺たちと共にその戦いに立ち向かってくれた良き仲間でもありました。
今のフォルトナを代表するメンバーにも、それぞれ、俺のように特別な相棒がいました。とても個性的で、仲間として、そして人生の先輩として俺たちを支えてくれた人たちです。故郷に帰った彼らとは、あれから全く連絡を取れていません。今頃どうしているのだろうとか、彼らの故郷はどんな景色なのだろうとか、今でも時々、俺たちの中で話題にのぼっています。
この本には、彼らと別れてからの二年間で自分たちが描いた軌跡を、俺の視点から記しています。つばさ(幼馴染なのであえてこう書きます)も自分の大切な人に向けて、俺と同じように今本を書いているところですが、つばさはつばさの言葉で、つばさがその人に伝えたいことを書いてくれると思います。

 前書きが長くなってしまったので、最後に。

遠い世界にいる貴方へ。
俺は元気です。貴方があの時、まだ未熟な俺を守り、支えてくれたおかげで、俺は自分の意志を持って強く生きることが出来ました。最後に貴方を引き止めていれば、今も共にいてくれていたのかもしれないと考えるときもあります。でも、それだと多分、キミに怒られてしまいそうだ。
会って話したいことがたくさんあるけれど、とりあえずこの本に全部を詰めたから、二冊目が出る前に早く、いつか、これが何かの形で届けばいいなと思います。

 

(20200630)