ルカくんと神機

 
 

 巨体は大地に重い衝撃を残して倒れた。
 対の刃は鈍く光っている。傷だらけのボディに指を滑らせると、二本の神機は応えるようにわなないた。もう何年もまともな手入れをしてあげられていないのに、それでもこの鋭さは衰えを見せない。
 彼は俺が地獄に落とされた始まりの日から、ずっと俺と共にあった神機。俺ではない誰かによって最低限の補修だけを施される、彼には何度も助けられてきた。俺を選んでくれた彼と一緒に、俺はこの世界を最後まで走り抜けたい。犬死になんてごめんだよ。
「これからも、俺とユウゴを守って」
 神機をケースにしまう直前。腕が繋がれてしまう前に、その柄に唇をつける。彼の二対の刃で切り開いてみせると誓った未来は、まだ暗い闇ばかりだ。けど、あのトラックに揺られて奈落を待つだけだった昔の自分とは違う。ユウゴと、俺と、彼がいればなんだって出来るんだ。
「頼むよ、俺の相棒」
 苦い味がした唇を離して、俺は神機をそっとケースに仕舞う。俺の腕は繋がれて、彼とはすぐに引き離された。

 
 

(20190502)