自機の設定考えてた。ムビとか見直したら修正するのでとりあえずこっちに。
運命を乗せたキャリッジがグリダニアにやってきた。あの日のことを、私はこれから先もずっと忘れない。その「運命」は間違いなく、その日その場所に収まるべき歯車だった。それが彼女に選択権のあるものだったかどうかは定かではない。少なくとも、その日は街全体がなぜか少し落ち着きがなかった。その理由は、キャリッジから降り立った彼女が英雄と呼ばれるようになった今でも分からないままだ。何か不思議な力でも働いていたに違いない。そう思いこむことでしかこの疑問を解決出来ないでいる。
メル=モリナ。本名秘匿で登録されたギルドカードに記載された彼女の情報は、たったひとつだけだった。彼女が女であるということだ。私が冒険者ギルドの職員でなくても分かるようなことだけが、彼女を証明することとして刻まれている。
カードに登録出来ることはそれほど多くはない。とはいえ、出身地も年齢も載せない人は珍しいの一言に尽きる。希望する職種を求めなかったことも印象に残った。様々な種族が様々な生き方をしているように、冒険者という括りの中にも多様な生き方がある。傭兵を生業とするか、流通に介入して生計を立てるか、はたまたそのどちらをも兼ねるか。どれを行うにしても冒険者ギルドに登録する者は多い。冒険者ギルドが身分を保証してくれるというのは、遠方からやってきた旅人にとって最大の強みなのだそうだ。だからこそ、冒険者ギルドに登録する者は初めから何か目的を持っていることが多い。
しかし、彼女はそうではなかった。
希望らしい希望はなく、仕事があれば受けたいという曖昧なもの。富も名声にも、己の力の研鑽にすらも興味がなさそうな、悪く言えば一般人。彼女に冒険者が向いているとは、少しも思えなかった。
けれど私にも仕事がある。この場合は、彼女の得意なことを聞き出す仕事だ。不得手な部類の依頼を回すことにならないようにという目的もある。
聞けば幼い頃から弓と槍を使っていたらしい。ここに来るまでは主に弓で狩りをしていたとも。ならば話は早い。グリダニアにはその二つについてのギルドがある。
そうなんですね。そう言ったときの彼女の顔のこわばりに違和感をおぼえた。嬉しそうな、悲しそうな――端的に言えばその二つの感情がないまぜになった顔だ。
私が故郷の森の香りを思い出す時の顔に似ているかも。そう感じた。森の違いですらはっきりと分かるのだから、型がある弓や槍なんかはもっと決定的に違うはず。多少それらを扱える、彼女が複雑な表情になるのも頷ける。
「ウルダハやリムサ・ロミンサにはまた違うギルドがあるわよ」
彼女は数拍考えたのちに「しばらく考えます」と言って私のもとを後にした。結論を急かしすぎてしまっただろうか。一抹の不安がよぎる。彼女は冒険者に向いていないかもしれない。さよならの挨拶が控えめでかわいらしかったからだ。
彼女が弓術士ギルドの門戸を叩いたと聞いたのは、その日の夕刻のことだった。