白銀の瓦礫の上に立っている。轟を今まで支えてくれていた、母の力だった。
頭のどこかでは分かっていた。積み上げた薄っぺらな人生と創り上げた小さな世界は、「自分のもの」だと思っていた母の力だったのだ。そしてそれは轟にとっての寄る辺のようなものだった。
それが、崩れた。足場の氷までぐずぐずに溶かされてしまった。けれど全く嫌な気分ではない。
夏の日差しは轟の世界を壊せない。けれども、それ以上の熱量をもって(あるいは、想像もつかない方法をもって)その世界を壊した人物の名前を、轟はきっと、一生忘れないと思った。
自分のものだ、これで父を負かしてやる。そう息巻いていた憎しみの獣はもういない。
轟の世界構築は、まだ始まったばかりだ。
(20190604:title by 天文学)